利食い・損切りルールは投資家のリターンを効率的に低下させる
よく、投資情報雑誌なんかに書いてありますよね。
『買値から20%上昇で利食い』
『5%下落したら損切り』
『逆指値は必ず入れること!』
これらの行動は、一体誰に対して利益をもたらすのでしょうか?
様々な視点から考えてみましょう。
証券会社の視点
証券会社(ブローカー)にとって、利食い・損切りを徹底する投資家は歓迎すべき顧客です。
証券会社は顧客が株式等を売買した際に発生する売買手数料を主な収入としています。
利食い・損切りを徹底する勤勉な投資家はそれを行わない怠惰な投資家と比べ頻繁に売買を繰り返し、証券会社へせっせと手数料を収めてくれるでしょう。
投資情報販売者の視点
例えば毎月刊行される投資情報雑誌等にとっても、利食い・損切りルールは歓迎すべきです。
定期的に持ち株を手放す勤勉な投資家は、同じ株式を購入して持ち続ける怠惰な投資家よりも彼らの発信する投資情報に貪欲でしょう。
次に購入すべき株式の情報を集めるため、勤勉な投資家は毎月投資情報雑誌を購読してくれるかもしれませんし、高いセミナー等にも参加してくれるかもしれません。
税務署の視点
意外にも税務署のお役人にとっても、利食い・損切りルールは悪いものではありません。
定期的に利益を確定する勤勉な投資家は、毎年利益に対して約20%の譲渡所得税を支払ってくれます。
一方、利益の確定もせず同じ株式を持ち続ける怠惰な投資家は、確定利益が無いという理由で税金を払う素振りも見せません。
投資家の視点
では、投資家にとってはどうでしょうか。
勤勉な投資家は利食い・損切りを行う度に手数料を支払い、折よく利益が出た年には気前よく税金を収めます。
怠惰な投資家は売買をそれほど行わないため手数料をあまり支払わず、税の支払いを繰り延べます。
そしてこの影響は、長期複利で計算するとべらぼうな格差を生み出します。
さて、利食い・損切りルールは勤勉な投資家に対して、それ以上の利益を与えるでしょうか。
恐らく(控えめに言って)なかなか難しいのではないでしょうか。
利食い・損切りによって投資家が利益を得る(損失を軽減出来た、いい所で利益を確定出来た等)ことがある一方、損失を被る(売却した株が更に上昇した等)こともあるでしょう。
しかし、過大な手数料と税の支払いは100%確実に勤勉な投資家を襲うのです。
怠惰な投資家になろう
以上のように、頻繁な売買は投資家のリターンを確実に低下させます。
そして、少々株価が下落したら手放さなければならないような株式など、そもそも最初から購入すべきではないのです。
投資の情報を発信する証券会社や投資情報の発行体は、わざわざ自らの利益となる「勤勉な投資家」を減らすような情報は発信してくれません。
情報が誰のために発信されているのかを考え、取捨選択する能力が投資にも必要とされているのです。